第8回 審査評

審査にあたられた石川和男、田所雅子、両作家審査委員から「審査評」をいただきました。

 

石川和男

(いしかわ かずお/画家・独立美術協会会員)

 

 今度の審査では予想を遥かに凌ぐ高水準の作品が多く、呻吟しつつ敢えて甲乙をつける運びとなりました。

 四号サイズは小品に分類されますが、構図・構成次第で大空間を表現することが可能であり、出品者の方々もその点をよく研究されているように感じました。

 また、細部描写をすることで却ってミニチュア感が出てしまったり巧拙が顕著になるのも小品の難しさですが、特に受賞作はいずれの作品も高い描写力とスケール感を表現しており、確かな素描力に裏付けられた安定感を心地良く受け止めました。

 個々の作品に目を向けると、大賞受賞作の玉富氏は縦構図で深い奥行きと繊細な色彩バランスで大気感豊かな画面、呉田氏は横一杯に広げた雲と難しい補色グラデーションの夕焼けを濁りなく描いて美しい、吉野氏は瑞々しい蓮の緑を前景に配し遠景を賑わせる白雲までの広がりを歯切れ良い構成ラインと色使いで爽やかに見せる、中村(美)氏は縦構図に思い切って大きく近景の砂丘を入れて垣で視点を奥へと誘導し構成的、心理的に遥かな広がりを表現、十文字氏は雲一つ無い青空と対照的に描き込んだ雪景色の密度の高さ、山本氏の空、連峰、海の面積配分の巧さ、色数を絞った雄弁さなどに注目しました。

 他にも有力作品が多く、次回が楽しみです。 

田所雅子

(たどころ まさこ/画家・光風会会員・日展会友)

 

 審査の始めから粒ぞろいの作品ばかりでした。

 一次審査で100名に絞られてからの審査に携わりましたので、大賞1名含む上位38名の入賞を、作家2名と協議会役員との10名で審査しました。

 4号という小さい画面に手数の入った密度の高い絵が、やはり目を惹き審査員の挙手を集めました。テーマから風景画が多いわけですが、風景をただ写し取っただけの絵ではなく、そこから踏み込んでご自分の世界を表現し、また狙いのはっきりとした作品が選ばれた結果となりました。

 上手い絵だけでなく、目の前にした実物の絵の「この絵肌が美しくて」「この構図の切り取り方がたまらなくて」と、絵を描く私たちを長い間画材を通して応援してくださっている協議会審査員の方々の、多種多様の絵を評価してくださるところも嬉しく感じました。

 その中でのjam大賞は、強い主張というよりは素直な描写の作品ですが、澄んだ朝の空気までを爽やかに表現されていて秀逸でした。

 このjam公募展の受賞者は、協賛社からうれしい賞品をいただけるだけでなく、全国で巡回展をしてもらえるというとても豪華な公募展です。

 お知り合いの方にもどうぞ巡回展のご案内をしてご覧いただき、素晴らしい展覧会を味わってください。